「学校に行けないのは、うちの子だけなんじゃないか」——日本では不登校の子だもが35万人を超え、12年連続で増加しています。
ただ、似たような状況は海外でも起きています。
この記事では、アメリカ・イギリス・韓国・フランス・フィンランドの公的な統計データをもとに、各国で「学校に行かない・行けない」子どもがどのくらいいて、どんな支援が行われているのかを解説します。
海外にも”不登校”はある?5カ国のデータを一覧比較
結論から言うと、学校に通えない・通わない子どもの増加は日本だけの現象ではありません。
ただし国によって統計の取り方や定義が異なるため、人数の大小だけで単純に比較できない点には注意が必要です。
まずは主要5カ国のデータを一覧で見てみましょう。
| 国 | 呼び方 | 主なデータ | 年度 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 不登校 | 353,970人(1,000人あたり38.6人) | 2024年度 |
| アメリカ | Chronic Absenteeism(慢性的欠席) | 全生徒の28% | 2022〜23年度 |
| イギリス | Persistent Absence(持続的欠席) | 全生徒の20.0%(約149万人) | 2023/24年度 |
| 韓国 | 학교밖청소년(学校外青少年) | 約17万3,800人 | 2024年推定 |
| フランス | Absentéisme(無断欠席) | 中等教育平均7%(高校生は最大19%) | 2024〜2025年度 |
| フィンランド | Poissaolot(欠席) | 中学生の約4割が毎月体調不良で欠席 | 2023年調査 |
例えば日本の不登校は「年間30日以上、心理的・情緒的・身体的あるいは社会的要因により登校しない(できない)状態」を指しますが、アメリカやイギリスの「Chronic Absenteeism」「Persistent Absence」は理由を問わず「年間出席日数の10%以上を欠席した状態」を指す、欠席”日数”ベースの統計です。
韓国の「학교밖청소년(学校外青少年)」は不登校というより、学校籍そのものを離れた子どもの人数を指します。
海外のデータは「学校に来ていない」を広く捉える傾向があり、日本より対象範囲が広い場合が多いのです。
それでも、各国とも増加傾向にあるという事実は共通しています。
アメリカ|生徒の28%が「慢性的欠席」に該当
アメリカでは不登校という単一の概念より、「Chronic Absenteeism(慢性的欠席)」という枠組みで欠席問題を捉えています。
米教育省によると、2022〜23年度は全生徒の28%が慢性的欠席に該当しました。
コロナ禍でピークだった2021〜22年度の31%からは改善したものの、20の州で30%を超える生徒が該当しており、地域差が大きいのが実情です。
「年間18日以上の欠席」で慢性的欠席に分類される
米教育省の定義では、理由を問わず年間出席日数の10%以上(約18日)を欠席した生徒が「慢性的欠席」とされます。
心理的な理由による欠席だけでなく、転居や病気による長期欠席なども含まれるため、日本の不登校よりかなり広い概念です。
学校側は「早期警告システム」で欠席の兆候を把握
アメリカの学校の多くは、欠席日数が一定を超えた時点で自動的にアラートが出る「早期警告システム」を導入し、家庭訪問やスクールソーシャルワーカーによる面談につなげています。
登校を強制するというより、欠席の理由(貧困、いじめ、メンタルヘルスなど)を早期に把握し、必要な支援につなげる仕組みづくりが進められています。
イギリス|「持続的欠席」が20%、深刻な欠席も2.3%
イギリス(イングランド)では、2023/24年度の全体欠席率は7.1%でした。
そのうち、出席すべき授業の10%以上を欠席した「Persistent Absence(持続的欠席)」に該当する生徒は20.0%、人数にすると約149万人にのぼります。
さらに50%以上を欠席した「Severe Absence(深刻な欠席)」も2.3%(約17万1,000人)存在し、コロナ禍前の2018/19年度(持続的欠席10.9%)と比べると、依然として高い水準が続いています。
出席率10%・50%という2段階のラインで管理
イギリスの統計は「10%以上欠席=持続的欠席」「50%以上欠席=深刻な欠席」という2段階の欠席率で区分されているのが特徴です。
日本のように「学校に行けているか・いないか」の二択ではなく、欠席の”深刻度”をグラデーションで捉えている点が異なります。
ホームスクーリングを選ぶ家庭は12.6万人に増加
イギリスではホームスクーリング(Elective Home Education)が法律で認められており、2025年秋の時点で12万6,000人の子どもが在籍しています。
これは前年から約12.8%の増加で、学校に通わないという選択そのものを制度として受け止めている点は、日本の不登校支援を考えるうえでも参考になります。
韓国|「학교밖청소년」17万人超、独自の支援ネットワーク
教育熱心な国というイメージが強い韓国ですが、学校籍を離れる「학교밖청소년(学校外青少年)」は2024年時点で約17万3,800人と推定されており、毎年新たに約5万人の青少年が学校を離ています。
理由のトップは「心理・精神的な困難」
韓国の青少年政策分析評価センターの実態調査によると、学業を中断した理由として最も多かったのは「心理・精神的な困難」(31.4%)で、「学びたいことを学ぶため」(27.1%)が続きます。
中断後の悩みとしては「偏見・差別・無視」(26.2%)や「新しい友人関係を築く難しさ」(25.0%)が上位に挙がっており、学校を離れた後の孤立が課題になっています。
全国222カ所の「꿈드림センター」が学び直しを支援
韓国では2015年から「꿈드림(クムドゥリム)」と呼ばれる学校外青少年支援センターが全国222カ所に設置されています。
学習支援だけでなく、資格取得や職業体験、心理相談、給食・交通費の補助まで行い、学校に戻ることを前提とせずに次の一歩を後押しする仕組みが整えられています。
フランス|高校生の欠席率は最大19%まで上昇
フランスでは2024〜2025年度、中等教育(コレージュ・リセ)全体で平均7%の生徒が「無断欠席(1カ月に半日換算で4回以上の無断欠席)」に該当しました。
学校段階によって差が大きく、コレージュ(中学校相当)では4%にとどまる一方、普通・技術リセ(高校)では10%、職業リセでは19%まで上昇します。
欠席率は学年が進むほど、学期が進むほど上がる
フランス国民教育省の調査では、欠席率は新学期が始まる9月には4%程度でも、学年末の5月には14%まで上昇する傾向が示されています。
社会経済的に厳しい家庭の生徒ほど欠席率が高くなる相関も指摘されており、経済状況と欠席のつながりが日本以上にはっきりデータ化されています。
ホームスクーリングは2022年から許可制に厳格化
フランスでは家庭で学ぶ「instruction en famille」が認められていますが、2022年の法改正により、以前の届出制から自治体の事前許可を得る方式に変更されました。
学校に通わない選択肢を認めつつも、行政の関与を強める方向に舵を切っている点は、日本の今後の制度設計を考えるうえでも興味深い動きです。
フィンランド|”不登校”の統計はないが欠席時間は2年で43%増
教育先進国として知られるフィンランドですが、実は日本のような全国統一の「不登校」統計は存在しません。
その代わりに生徒一人あたりの年間欠席時間という指標が使われており、2023年の調査では平均約60時間で、2021年と比べて43%も増加しています。
中学生の約4割が「毎月、体調不良で欠席」と回答
2023年の学校保健調査(Kouluterveyskysely)では、中学2〜3年生(8〜9年生)の38%が「毎月、体調不良を理由に欠席している」と回答しており、2017〜2019年の25%から大きく増えています。
さらに研究レベルでは、通学に大きな支障が出るほどの深刻な欠席を抱える中学生が、該当学年の2〜3%(少なくとも4,000人以上)存在するとの推計もあります。
2023年の法改正で「早期の予防」重視に転換
フィンランドでは2023年8月の法改正により、欠席日数を事後的に管理する発想から、家庭・学校・地域が連携して欠席の兆候を早期に把握し、予防的に介入する仕組みへと方針が転換されました。
日本の35万人と比べてわかること
日本の不登校児童生徒数は2024年度に353,970人となり、12年連続で過去最多を更新しています。
1,000人あたりでは38.6人、理由としては「学校生活へのやる気が出ない」(30.1%)、「生活リズムの乱れ」(25.0%)、「不安・抑うつ」(24.3%)が上位を占めます。
どの国も「学校に行けない理由」はメンタルヘルスに集約されつつある
定義や統計の取り方は国ごとに異なるものの、5カ国を並べてみると共通点が見えてきます。
アメリカもイギリスも欠席増加の背景にメンタルヘルスの悪化を挙げており、フィンランドでも「体調不良」を理由にした欠席が急増しています。
日本の「不安・抑うつ」24.3%という数字も、特殊な現象ではなく世界的な傾向の一部だと捉えることができます。
実際、夏休み明けなど新学期の節目に欠席や行き渋りが増えやすいのは日本に限った話ではなく、生活リズムの乱れやメンタルの不調が重なりやすい時期であることが背景にあります。
夏休み明けの2学期をどう乗り越えるかについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
「学校に戻す」より「学びを保障する」方向への制度転換
イギリスのホームスクーリング拡大、韓国の꿈드림センター、フィンランドの予防重視への法改正——各国に共通するのは、「学校に来ていない子どもを無理に戻す」ことより「学校以外の場所でも学びや育ちを保障する」方向に制度が動いている点です。
日本でも、不登校の子どもがフリースクールや自宅学習で学んだ内容を学校の出席として認める出席扱い・成績評価の制度が整いつつあり、同じ流れの中にあると言えます。
まとめ
- 日本の不登校は353,970人(2024年度)で12年連続増加。海外でも同様の増加傾向がある
- ただし国ごとに定義(欠席日数ベース/学籍離脱ベースなど)が異なるため、単純比較はできない
- アメリカは28%、イギリスは20.0%が「慢性的・持続的欠席」に該当(欠席日数ベースの広い定義)
- 韓国は17万3,800人が「学校外青少年」、フランスは高校生の欠席率が最大19%まで上昇
- フィンランドに全国統一の不登校統計はないが、欠席時間は2年で43%増加
- 共通する背景はメンタルヘルスで、各国とも「学校に戻す」より「学びを保障する」方向へ制度が変化している





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